フィラリアは人間に感染する?しない?
2019年10月15日フィラリアは、犬や猫だけでなく人間にも感染する病気です。多くの場合、人間に感染しても免疫によって死滅しますが、病気や投薬治療などによって免疫が弱まっているとリンパ系フィラリアという病気を引き起こします。1年を通じて温暖で蚊の活動が活発な熱帯や亜熱帯の国々で1億2000万人を超える感染者がいるとされています。
感染経路は、犬フィラリアと同じです。フィラリアの幼虫をもつ蚊に刺されることによって体内に幼虫が送り込まれて感染します。犬や猫の場合は、肺に血液を送る心臓右心室に移動して成虫になりますが、人に感染した幼虫は、リンパ節に遮られ心臓右心室まで到達できません。現在まで確認されている原因のうち90~95%がバンクロフト糸状虫と指摘されており、主にハマダラカやイエカ、ヤブカを媒体に感染します。この他にもマレー糸状虫が原因になることもあります。
リンパ系フィラリアに感染するのは子供の時期が多くなっています。まず急性期の症状として悪寒を伴う発熱があらわれますが、風邪などの病気と区別しづらく寄生虫が原因であると気づくことも稀です。そのまま成人した後に腕や足に赤身のあるミミズ腫れが生じるリンパ管炎、頸部や耳の下などが腫れるリンパ節炎が、発熱を伴ってあらわれます。いずれの原因もリンパ液の循環が、寄生虫によって妨げられているためです。
リンパ浮腫を引き起こすことがあります。リンパ液の流れが悪化することで腕や胸、生殖器が腫れる、免疫低下でバクテリアに感染しやすくなる病気です。このリンパ浮腫が悪化すると象皮症という病気になります。これは人の皮膚組織が結合に問題が起こり異常増殖して膨れていき、ゾウの皮膚のように硬くなるという後遺症の一つです。人の陰嚢や上腕、陰茎や外陰部、乳房などに発症しやすいと指摘されており、原因である寄生虫を駆除しても肥大し続けることがあります。
日本では平安時代からリンパ系フィラリアとみられる病気がありました。平安時代に描かれた絵巻にリンパ系浮腫や象皮症と思わしき女性貴族、陰嚢が肥大した男性貴族などが描かれています。また江戸時代になると葛飾北斎が膝丈以上の大きさに膨れ上がった陰嚢を布で固定した人物を描くなど、日本でも象皮病は珍しくありませんでした。有名な西郷隆盛も陰嚢の象皮症で悩んでいました。西南戦争後の遺体確認では、首が別の場所に埋められていたため、巨大な陰嚢で遺体検分されています。
犬や猫の病気だと思われがちなフィラリアですが、このように人にも感染する病気です。ペットを飼育している方は、愛犬や愛猫のためだけでなく、自分や家族、周辺に住む方々への責任としてフィラリア予防を行うことが求められます。